脂質異常症

プラークは血栓から生じる
脂質異常症 · 2022/02/23
アテローム性動脈硬化症による心血管疾患(CVD)のリスクには、喫煙、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、血管炎、視床下部-下垂体-副腎軸機能障害(コルチゾール)、精神的ストレス、感染症、肺塞栓症などがありますが、どれも、グリコカリックスと内皮の損傷、大きく除去が難しい血栓、修復システムの障害の3点に関与し、血栓形成を促進します。特に、人や動物で肺塞栓症により、他のリスクなしに、血栓だけで肺動脈にプラークが形成されることが証明されたことは、血栓形成仮説の妥当性をより強固にしました。ちなみに、LDLはCVDのリスクではありませんでした。(Weng SF, PLoS ONE. 2017)(つづく) 詳しくはFB特集記事「血栓形成仮説:アテローム性動脈硬化症の成因」をご覧ください。

プラークは血栓から生じる
脂質異常症 · 2022/02/23
「アテローム性動脈硬化プラークはコレステロール(LDL)からなる」とするコレステロール仮説を、世界中の循環器専門医を含めた全ての人が信じて疑いません。しかし、LDLが内皮下にどのように取り込まれ、プラーク内の脂質は本当にLDLであるのかすら、実は証明されていないのです。 一方、プラークは血栓の内膜への沈着の結果生じるとする血栓形成仮説があります。血栓は内皮損傷部位を覆うように生じ、血液中の血管内皮前駆細胞 (EPCs)が血栓に張り付いて新しい内皮細胞となり、血栓は内皮下に収まります。また、EPCsは単球に分化してマクロファージとなり、血栓残渣の掃除をして泡沫細胞となることも明らかになりました。プラーク破裂と引き続く治癒過程は急速なプラーク拡大の主な要因と考えられ、冠動脈狭窄が段階的に進展することを説明します。プラーク内の脂質は血栓形成過程で必要な赤血球とLp(a)に由来すると考えると、全てで合点が行き矛盾がありません。

糖質制限食によるLDLコレステロールの増加:Lean Mass Hyper-Responderの証明(3)
脂質異常症 · 2021/12/06
また、脂肪酸化とケトーシスを促進するSGLT2阻害薬がLDLを増加させるがASCVDリスクを低下させることから類推すると、酸化器質を炭水化物から脂肪に転換することは本質的にLDLを上昇させる可能性を示唆する。(Basu D, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2018)炭水化物摂取の低下はリポプロテインリパーゼによるVLDLからLDLやHDLへのリモデリングの増加と共にVLDL系粒子による脂肪エネルギーの運搬系を増加させ、結果的に高LDL、高HDL、低TGとなる。(Kontush A. Trends Mol Med. 2020)この効果は痩せてエネルギー需要が高くインスリン感受性の高い人で著明であると推測され、他の論文にも一致する。(Bak AM, PLoS One. 2018)しかし、これらは糖質制限食による高LDLがASCVDのリスクとはならないことを意味するわけではなく、さらなる検討が必要である。 糖質制限食が特に役に立つ肥満や2型糖尿病患者では、糖質制限によりLDLの増加は少なく、脂質プロファイルが改善しASCVDリスクマーカーが軽減する可能性がある

糖質制限食によるLDLコレステロールの増加:Lean Mass Hyper-Responderの証明
脂質異常症 · 2021/12/06
さらに、LMHR群の存在を証明し、糖質制限前のLDLは普通で糖質制限後に著明に増加する特徴を明らかにした。LMHRは動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の高リスクな集団で観察される脂質異常症のパターン(高LDL・高TG・低HDL)とは対照的である。(Bagheri P, BMC Endocr Disord. 2021) 高TG/HDL比、small dense LDLプロファイルはASCVDの脂質異常に特徴的であるが(Libby P. Nature. 2021)、LMHRでは逆パターンを示す。ASCVDのリスク因子を調べたWomen’s Heart Studyでは、インスリン抵抗性脂質異常症(高TG・低HDL)は高LDLよりもASCVDに関連した。(Dugani SB, JAMA Cardiol. 2021)4S試験では、高LDL患者は高TG・低HDL患者と比べ冠疾患イベントリスクが低く、スタチン治療で利益が得られなかった。(Ballantyne CM, Circulation. 2001)さらに、糖質制限食はLDL粒子サイズを増加し、同じLDLレベルでもリスクを低下させた。

糖質制限食によるLDLコレステロールの増加:Lean Mass Hyper-Responderの証明
脂質異常症 · 2021/12/06
糖質制限食による LDLコレステロール(以下LDL)の変化は均一ではない。糖質制限食(130g/日以下)を続けた597人でBMIと脂質マーカーとの相互関係を調べたところ、BMIはLDLの変化と逆相関した。また、健康な代謝のマーカーであるTG/HDL比の減少はLDLの増加を予測した。糖質制限食によりLDL>200、HDL>80、TG<70を充たす群(Lean Mass Hyper-Responders)は112名存在し、BMIはより低かったが、残りの群と比べて糖質制限前のLDLに差はなかった。症例研究では、厳格な糖質制限で超高値LDLを認めた患者5例で、フルーツやでんぷんによる糖質制限食の緩和(50g-100g/日)によりLDLの顕著な低下を認めた。(Norwitz NG, Current Developments in Nutrition, 2021) ----- 糖質制限食によるLDLの著明な増加は痩せて代謝的に健康な人でより起きやすい。糖質制限食前のTG/HDL比が低く、BMIが低いほどLDL増加に強く関連した。

スタチンで冠動脈カルシウムスコアが増加?
脂質異常症 · 2021/10/10
冠動脈カルシウムスコアが年に15%以上増加すると、将来心筋梗塞になるリスクが非常に高い。(Raggi P, Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 2004) 冠動脈カルシウムスコアの進行がスタチンにより1年で29.7%増加するが、スタチンとPCSK9阻害薬の併用により14.3%に低下するとする趣旨の論文が発表されたが、実は薬なしのコントロール群では5%以下であった。(Ikegami Y, npj Aging and Mechanisms of Disease. 2018) スタチンで冠動脈カルシウムスコアが増加するのであれば、スタチンを内服する理由ってあるのかしら?

悪いのはLDLじゃなくて植物油!
脂質異常症 · 2021/03/15
LDLコレステロールそのものは動脈硬化巣の泡沫細胞形成に関わらず、酸化変性したLDLがその原因であると考えられています。では、酸化LDLとはいったい何なのでしょうか? LDL粒子の中で酸化変性しやすいのはコレステロールエステルやリン脂質の不飽和脂肪酸であり、活性酸素やフリーラジカルなどによる攻撃の標的となっています。中でも、最も酸化しやすいのがオメガ6不飽和脂肪酸であるリノール酸です。酸化LDL仮説は酸化リノール酸仮説と言えるかもしれません。 今日、私たちの摂取カロリーの約20%を100年前には存在しなかった植物油から得ており、リノール酸の消費は劇的に増加しました。粥状動脈硬化症の形成に酸化LDLは重要な役割を果たしますが、それは酸化リノール酸や危険な酸化リノール酸代謝物質の作用によります。食事のリノール酸量(主に植物油)を減らすことは、LDLのリノール酸量を減らし、酸化LDLを減らし、粥状動脈硬化症と冠動脈疾患のリスクを減らします。ちなみに、スタチンで酸化LDLを減らすことはできず、泡沫細胞の形成を抑制することもできません。(つづく)

脂質異常症 · 2020/07/12
スタチンは、心筋梗塞既往歴のある比較的若い男性で、心筋梗塞死亡率をわずかに減らしますが、総死亡率は下げません。女性、老人に至っては、心筋梗塞死亡率も、総死亡率も、一切下げることはありません。 さらに、スタチンには、筋肉障害、肝機能障害、糖尿病、認知症など、深刻な副作用があります。なのに、日本中の医師は、ガイドラインを信じて疑うことなく、スタチンを処方し続けており、問題は非常に深刻なのです。 心筋梗塞の最大の危険因子は、メタボリック症候群です。その診断要因は、肥満、高血圧、糖尿病、高中性脂肪、低HDLコレステロールであり、LDLコレステロールは含まれていません。 当院ではコレステロールではなく、メタボリック症候群の治療を最優先課題として、動脈硬化症を予防しています。幸い、糖質制限食により、インスリン抵抗性は改善するため、全ての要因が正常化に向かいます。 医師として最も大事なのは、「患者に害をなさない」ことです。健康利益が明らかでない薬の処方は許されません。コレステロールが高くて不安だけど、薬は飲みたくないと言う方は、当院で治療してみませんか? 紹介状は必要ありません。是非、ご連絡ください

脂質異常症 · 2020/07/12
生来健康な人が、検診を受けたばかりに、高コレステロール血症と診断され、「このままででは動脈硬化症が進んで、心筋梗塞になる」と医師に脅かされ、訳も分からぬままスタチンと言うコレステロール治療薬を処方されたけど、大病を防ぐためだからしょうがないと納得し、以来、薬をずっと飲み続けてるなんて人が、日本中にわんさかいます。 日本動脈硬化学会のガイドライン、LDLコレステロール>140mg/dLを治療基準とした場合、実に、健康な高齢者女性の40%、男性の30%もの人が、スタチンの対象となります。これって、ちょっとおかしいと思いませんか? コレステロール仮説は、元を正せば、アンセル・キーズの作り話なのに、それを承認した学会と政界、「金のなる木」を手放さない製薬業界と食品業界に守られ、神聖不可侵な領域として、今もなお存続しているのです。 そもそも、コレステロール値と心筋梗塞に、明らかな関連は認めません。それどころか、コレステロール値は高いほど総死亡率が下がることが、世界中で報告されています。

脂質異常症 · 2020/04/05
飽和脂肪酸の摂取によりコレステロールは上昇し、コレステロールの上昇は心血管疾患を増やすとするアンセルキーズのダイエット・ハート仮説は、全く根拠がないと証明されているにもかかわらず、未だに食事ガイドラインに脈々と受け継がれている。以来、私たちは、高コレステロール血症は粥状動脈硬化の原因であるとするこのコレステロール仮説に洗脳され続けている。 コレステロール仮説を支持する主な根拠として、1)粥状動脈硬化プラーク(粥腫)は脂肪線条から始まる、2)粥腫に大量のコレステロールが見いだされる、3)粥腫に見いだされたリポタンパク質はLDLである、の3つがある。しかしどれも科学的証拠に欠ける思い込みである。 一方で、内皮の傷害による血栓により粥腫が形成されると考える傷害反応仮説がある。傷害反応仮説では内皮の傷害率が修復率を上回れば粥腫になると考える。その要因には、加速する内皮傷害、大きく浄化困難な血栓、治癒の損傷、がある。コレステロール仮説より、心血管疾患の多様性やリスクを正確に矛盾なく説明できる。 心血管疾患リスクを減らすには、1)内皮を傷害から守る、2)凝固能を減らす、3)治癒過程を促進する。

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